ホワイト・ラビット (曲)

曖昧さ回避 「White Rabbit (緑黄色社会の曲)」とは異なります。
1967年のシングルの広告
「ホワイト・ラビット」
ジェファーソン・エアプレインシングル
初出アルバム『シュールリアリスティック・ピロー
B面 「プラスティック・ファンタスティック・ラヴァー」
リリース
録音 1966年11月3日 (1966-11-03)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 カリフォルニア州ハリウッド RCA
ジャンル サイケデリック・ロック[1]
時間
レーベル RCAヴィクター
作詞・作曲 グレイス・スリック
プロデュース リック・ジャラード
ジェファーソン・エアプレイン シングル 年表
あなただけを(英語版)
(1967年)
「ホワイト・ラビット」
(1967年)
サイケデリック・プーネイル(英語版)
(1967年)
ミュージックビデオ
White Rabbit - YouTube、ジェファーソン・エアプレイングレイス・スリック (ボーカル)。RCAレコード 74-160269、ステレオ、シングル (1967年)。(2分31秒、HQ)
ミュージックビデオ
White Rabbit - YouTube - ジェファーソン・エアプレイングレイス・スリック (ボーカル)。アルバム『シュールリアリスティック・ピロー』、ステレオ (1967年)。(2分32秒、HQ、歌詞付き)
ミュージックビデオ
White Rabbit - YouTube - ジェファーソン・エアプレイングレイス・スリック (ボーカル)。アルバム『シュールリアリスティック・ピロー』、ステレオ (1967年)。(2分38秒、8Dオーディオ「マルチダイレクショナル」、歌詞付き)
ミュージックビデオ
White Rabbit - YouTube - ジェファーソン・エアプレイングレイス・スリック (ボーカル)。『The Smothers Brothers Comedy Hour』でのライブ (1967年)。 (2分29秒)
ミュージックビデオ
White Rabbit - YouTube - ジェファーソン・スターシップキャシ-・リチャードソン(英語版) (リードボーカル)、ポール・カントナー(英語版)デヴィッド・フライバーグ(英語版)ドニー・ボールドウィン(英語版)スリック・アギラール(英語版)、クリス・スミス、マーティ・バリン(英語版)。2012年のPBSの特別番組『My Music: 60s Pop, Rock and Soul』でのライブ。 (2分45秒)
テンプレートを表示

ホワイト・ラビット」("White Rabbit")は、グレイス・スリックが制作し、アメリカ合衆国のロックバンドのジェファーソン・エアプレインが1967年のアルバム『シュールリアリスティック・ピロー』向けに収録した楽曲である。この曲はシングルとして発売され、Billboard Hot 100でバンド史上2度目のトップテン入り、最高8位に到達した[2]。この曲は『ローリング・ストーン』誌のオールタイム・グレイテスト・ソング500で455位[3]Rate Your Music(英語版)のオールタイム・トップ・シングルで116位[4]ロックの殿堂でロックン・ロールを形成した500曲に選出された。

歴史

「ホワイト・ラビット」はグレイス・スリックグレート・ソサエティ(英語版)在籍時に制作、演奏した曲である。スリックは出産を機に脱退した女性シンガーのシグニー・トリー・アンダーソン(英語版)の後任としてジェファーソン・エアプレインにサンクした。 スリックがジェファーソン・エアプレインで最初に録音したアルバムが『シュールリアリスティック・ピロー』であるが、スリックは前グループから「ホワイト・ラビット」と義弟のダービー・スリック(英語版)が制作した「あなただけを(英語版)」("Somebody to Love"、グレート・ソサエティで録音された際の題は "Someone to Love")を提供した[5]。グレート・ソサエティの「ホワイト・ラビット」はジェファーソン・エアプレインのそれよりも長尺であった。両曲ともジェファーソン・エアプレインではトップ10に入るヒット作となり[6]、これ以降同バンドとの結びつきが続いている[7]

作詞・作曲

「ホワイト・ラビット」はグレイス・スリックの初期の曲の1つであり、1965年12月から1966年1月にかけて書かれたものである[8]。この曲はルイス・キャロルの1865年のファンタジー『不思議の国のアリス』と1871年のその続編『鏡の国のアリス』で見られる薬を飲んだり、未知の液体を飲んだりするとサイズが変わるというイメージが用いられている。

スリックはまず歌詞を書き、次に50ドルで買った8から10個の鍵盤が欠けた赤いアップライトピアノで「欠けた音は頭の中で聞こえるから大丈夫」と言って作曲した[9]。彼女によるとこの曲はマイルス・デイヴィスの『スケッチ・オブ・スペイン』、特にデイヴィスが「アランフエス協奏曲」を演奏したことに大きな影響を受けたという。彼女は後に「ダークなスペインのマーチをバックにアリスについての奇妙な曲を書くことは当時のサンフランシスコの状況にマッチしていた。私たちは皆、予想されていることからできるだけ離れようとしていた」と語った[8]

スリックは子供にこのような小説を読ませておいて、なぜ子供が麻薬に手を出したのかと悩む親たちへの非難の意味を込めたという[10]。彼女はまた女の子に読ませるおとぎ話には必ずと言っていいほど王子様が現れて助けてくれるが、アリスはそうではなく、彼女はとても奇妙な場所に1人でいて、「あ、白ウサギだ」と好奇心に従って進み続けたのであり、多くの女性がこの物語からいかに自分の主張を押し通すことができるかというメッセージを受け取っただろうと語った。「feed your head」のくだりは読書とサイケデリックスの両方を指している[9]

スリックはアリス、白ウサギ、水煙草を吹かす芋虫(英語版)白の騎士(英語版)赤の女王(英語版)眠りネズミ(英語版)が参照されている[11]。スリックはアシッド・トリップの後にこの曲を書いたと言われている[12]

スリックは「ホワイト・ラビット」は「自分の好奇心に従うこと。白ウサギはあなたの好奇心」であるとしている[13]。彼女をはじめとする1960年代の人々にとってドラッグは意識の拡大や社会実験の一部であった。謎めいた歌詞をもつ「ホワイト・ラビット」はラジオでの規制を目をかいくぐって薬物を語った最初期の曲のひとつとなった。ジェファーソン・エアプレインでスリックと競っていたマーティ・バーリン(英語版)もこの曲を「傑作」と評価している。スリックはインタビューで『不思議の国のアリス』は子供の頃によく読んでもらい、大人になっても鮮明な記憶として残っていると語っている[3]

ウォール・ストリート・ジャーナル』紙上のインタビューでスリックは『不思議の国のアリス』のほかにモーリス・ラヴェルの『ボレロ』にもインスピレーションを受けたと述べている。『ボレロ』と同様に「ホワイト・ラビット」は本質的に1つの長いクレッシェンドである。この曲と歌詞の組み合わせは幻覚剤で経験する感覚の歪みを強く示唆しており、後にそのような状態を暗示したり伴ったりするためにポップカルチャーで使用された[14]

この曲はグレート・ソサエティが1966年初頭にサンフランシスコのバーで初めて演奏し、その後はグレイトフル・デッドのような大物バンドの前座を務めた際にも披露された。彼らはオータム・レコーズ(英語版)向けにデモテープを制作し、その際にスライ・ストーンの協力を得た。スリックは「私たちはあまりにも酷かったので、スライは最終的にデモ音源が問題ないようにすべての楽器を演奏した」と語った。1966年にジェファーソン・エアプレインに参加したスリックはこの曲を提供し、アルバム『シュールリアリスティック・ピロー』に収録された[8]。この曲はイ長調のキーで書かれている[15]

チャート史

週間チャート

チャート (1967年) 最高
順位
カナダ『RPM』トップ・シングル[16] 1
アメリカ合衆国『ビルボードHot 100[17] 8
アメリカ合衆国『キャッシュボックス』トップ100[18] 6
チャート (1970年) 最高
順位
オランダ (Dutch Top 40)[19] 3
チャート (1987年) 最高
順位
全英シングルチャート (OCC(英語版)) 94

年間チャート

チャート (1967年) 順位
カナダ[20] 48
アメリカ合衆国『ビルボード』[21] 81
アメリカ合衆国『キャッシュボックス』[22] 60

キャッシュボックス[23] (11週): 59位、45位、23位、14位、12位、11位、8位、6位、7位、22位、41位

パーソネル

  • グレイス・スリック – ボーカル
  • ヨーマ・コーコネン(英語版) - リードギター
  • ポール・カントナー(英語版) - リズムギター
  • ジャック・キャサディ(英語版) - バス
  • スペンサー・ドライデン(英語版) - ドラム

カバー

この曲は多数のアーティストによりカバーされた。以下はその一例である:

  • ギタリストのジョージ・ベンソンが1971年にジャズ・バージョンを発表しており、ハービー・ハンコックがエレクトリックピアノのソロで参加した。
  • パンク/ゴシック・ロック・バンドのダムドにより1980年にシングルが発売された。
  • 1985年に南カリフォルニアのパンク・バンドのジ・アレイ・キャッツ(英語版)(当時の名称はザーコンズ)によりカバーされた[24]
  • 1987年にアメリカのメタル・バンドのサンクチュアリがカバーし、デビューアルバム『新たなる聖地へ(英語版)』に収録された。
  • 1993年にインダストリアル・ロック・グループのデス・メソッドがカバーし、多数のアーティストによるコンピレーション・アルバム『Shut Up Kitty』に収録された。
  • 1996年にアイスランドのシンガーソングライターのエミリアナ・トリーニがカバーした。このバージョンは2011年の映画『エンジェル ウォーズ』のサウンドトラックとしても使われた。
  • 1997年にボーン・フォー・ブリスがアルバム『Flowing with the Flue』でカバーした。
  • 2002年に発売されたアルバム『Don't Know When I'll Be Back Again: A Compilation Benefiting American Veterans of the Vietnam War』にはイーノンによるカバーが収録された。
  • ブルーマン・グループはこの曲をステージで使用し、2003年のアルバム『ザ・コンプレックス(英語版)』に収録された。
  • シェイクスピアズ・シスターがカバーし、2004年のアルバム『The Best of Shakespear's Sister』に収録された。
  • パティ・スミスが2007年にカバーし、アルバム『トゥウェルヴ(英語版)に収録された。
  • コライド(英語版)あg2007年の映画『バイオハザードIII』のサウンドトラックにDnBリミックス版を提供した。
  • 2010年にグレイス・ポッター・アンド・ザ・ノクターナルズがコンセプト・アルバム『オールモスト・アリス』でカバーした[25]
  • 2012年にレディホークがトリプルJ(英語版)のラジオ番組「Like a Version」でカバーを披露した[26]
  • ポール・カークブレナー(英語版)は2015年のリミックス曲「Feed Your Head」でこの曲の歌詞を使用した。
  • タリー・ホール(英語版)のメンバーであるジョー・ホーリーが2016年のソロ・アルバム『Joe Hawley Joe Hawley』でカバーした。
  • ポップ・ロック歌手のピンクが2016年の映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』向けにこの曲をカバーしたが、サウンドトラックには含まれなかった。このバージョンは代わりに2017年のアルバム『ビューティフル・トラウマ(英語版)』の日本盤にボーナストラックとして収録された。
  • ヘイリー・ラインハート(英語版)が2017年のアルバム『ホワッツ・ザット・サウンド?(英語版)』でカバーした。
  • スウェーデンのアーティストであるロリーンがライブでこの曲を演奏した。

ポップカルチャーでの使用

参考文献

  1. ^ Myers, Marc (31 May 2016). "How Jefferson Airplane's Grace Slick Wrote 'White Rabbit'". International Times. 2016年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月21日閲覧
  2. ^ “Top 100 Music Hits, Top 100 Music Charts, Top 100 Songs & The Hot 100”. Billboard.com. July 13, 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。July 8, 2011閲覧。
  3. ^ a b “The RS 500 Greatest Songs of All Time” (December 9, 2004). June 22, 2008時点のオリジナルよりアーカイブ。August 7, 2011閲覧。
  4. ^ “Top Singles of All-time”. Rate Your Music. October 30, 2012閲覧。
  5. ^ “Darby Slick Puts Original Lyrics Up For Sale”. Jambands.com (26 March 2014). 2015年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月3日閲覧。
  6. ^ “Billboard – Jefferson Airplane”. Billboard.com. 2015年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月31日閲覧。
  7. ^ Tamarkin, Jeff, ed (2003). Got a revolution!:the turublent flight of Jefferson Airplane. Atria. p. 113. ISBN 0-671-03403-0. オリジナルのJuly 1, 2014時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140701204724/http://books.google.com/books?id=TKyYNB0pGIoC&pg=PA113&dq=grace+slick+contract&hl=en&ei=X4W8TegBzZy3B-nAucEF&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=3&ved=0CEAQ6AEwAg#v=onepage&q=grace%20slick%20contract&f=false April 30, 2011閲覧。 
  8. ^ a b c Myers, Marc (2016). Anatomy of a Song. Grove Press. pp. 92–99. ISBN 978-1-61185-525-8 
  9. ^ a b Jesudason, David (23 August 2021). “Grace Slick and Jack Casady of Jefferson Airplane: how we made White Rabbit”. The Guardian. https://www.theguardian.com/music/2021/aug/23/grace-slick-and-jack-casady-of-jefferson-airplane-how-we-made-white-rabbit 
  10. ^ “Biography – Grace Slick”. Jeffersonairplane.com. 2017年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月31日閲覧。
  11. ^ “White Rabbit Lyrics”. Metrolyrics.com. 2015年2月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月31日閲覧。
  12. ^ Hughes, Rob (October 29, 2016). “The Story Behind The Song: White Rabbit by Jefferson Airplane”. TEAMROCK.COM. August 2, 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月2日閲覧。
  13. ^ Myers, Marc. “She Went Chasing Rabbits”. The Wall Street Journal. オリジナルのJanuary 8, 2015時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150108161611/http://www.wsj.com/news/articles/SB10001424052748703778104576287303493094530?mg=reno64-wsj&url=http%3A%2F%2Fonline.wsj.com%2Farticle%2FSB10001424052748703778104576287303493094530.html August 2, 2016閲覧。 
  14. ^ Robert Dimery (1 October 2015). 1001 Songs You Must Hear Before You Die (First ed.). Cassell. ISBN 978-1844038800 
  15. ^ Grace, Slick (2010年9月28日). “White Rabbit”. Musicnotes.com. 2021年6月9日閲覧。
  16. ^ “Item Display - RPM - Library and Archives Canada”. Collectionscanada.gc.ca (1967年8月5日). 2018年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月14日閲覧。
  17. ^ Joel Whitburn's Top Pop Singles 1955-1990 - ISBN 0-89820-089-X
  18. ^ “Cash Box Top 100 8/12/67”. Tropicalglen.com. 28 November 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。12 May 2019閲覧。
  19. ^ "Nederlandse Top 40 – Jefferson Airplane" (in Dutch). Dutch Top 40.
  20. ^ RPM Top 100 Singles of 1967”. Collectionscanada.gc.ca. 12 August 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。12 May 2019閲覧。
  21. ^ “Top 100 Hits of 1967/Top 100 Songs of 1967”. Musicoutfitters.com. 23 March 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。12 May 2019閲覧。
  22. ^ “Cash Box YE Pop Singles - 1967”. Tropicalglen.com. 7 September 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。12 May 2019閲覧。
  23. ^ Hoffmann, Frank (1983). The Cash Box Singles Charts, 1950–1981. Metuchen, NJ & London: The Scarecrow Press, Inc. p. 303 
  24. ^ “The Zarkons - Riders In The Long Black Parade”. Discogs.com. 25 September 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。12 May 2019閲覧。
  25. ^ “Tim Burton's Alice in Wonderland Soundtrack Track List Released” (英語). Flavorwire (2010年1月12日). 2019年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月15日閲覧。
  26. ^ “Ladyhawke - 'White Rabbit' (Jefferson Airplane cover triple j's Like A Version)”. YouTube (2012年7月20日). 2019年5月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月24日閲覧。
  27. ^ “Hunted.” Supernatural, created by Eric Kripke, season 2, episode 10, Kripke Enterprise, Wonderland Sound and Vision, Warner Bros. Television, 2007.
  28. ^ https://ew.com/movies/the-matrix-4-trailer-keanu-reeves/

外部リンク

小説と詩
キャラクター
映像作品
  • 一覧
  • 映画第一作(1903)
  • 戦前のオールスター映画(1933)
  • 英国のミュージカル映画(1972)
  • 日独のテレビアニメ(1983/84)
  • ドリームチャイルド(1985)
  • シュヴァンクマイエルの映画(1988)
ディズニー映画
関連項目
カテゴリ カテゴリ
典拠管理データベース ウィキデータを編集
  • MusicBrainz作品