コロモガイ科
コロモガイ科 | ||||||||||||||||||
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大阪市立科学館のコロモガイ | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
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英名 | ||||||||||||||||||
nutmeg snails 中名 核螺科 (hé luó kē) |
コロモガイ科(Cancellariidae)は新腹足類に属する巻貝の科[3]。貝殻は高さ約5cm以下で表面は粗い布目または格子模様。蓋はもたない。新腹足類中もっとも古いグループのひとつであることが示唆されており[4]、両極をふくむ世界中の海に生息する。
分布
両極を含む世界中の海に分布するが、属によって生息域や深度が異なる。たとえば寒流に生息するエゾゴロモ類の場合、生息域の南限の宮城県沖では水深1000m程度の深海に棲む[5]。
系統発生
以前は本科のみでコロモガイ上科(Cancellarioidea)を構成していたが、Bouchet et al. (2017) の分類体系ではFedosov et al. (2015) による分子系統解析の結果(ガクフボラ科を姉妹群とする)に基づきガクフボラ上科に置かれている[6]。
コロモガイ科関連の Modica et al. (2011) および Hayashi (2005) による系統分岐図の一部の一例を下に示す[7][4]。各属で例示した種の和名は主にアボット (1985)を参照した。生息域のうちインド洋-西太平洋はIWPのように略記した。
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種類
主に下表のような属と種が知られている[2][8]。例示した各属の貝の和名は主にアボット (1985, p. 229-235)[9]によった。
貝殻の外観 | 各属の種の一例・分布の例 |
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Cancellariinae[注釈 1] | コロモガイ類 |
Aphera ワライコロモガイ[10] Aphera tessellata (G. B. Sowerby I, 1832) メキシコ西岸からペルー 貝殻の口が笑った形。 | |
Bivetia Jousseaume, 1887 = Cancellaria コウシコロモガイ Bivetia jayana Keen, 1958 メキシコ西岸からパナマの沖に普通[11]。 | |
図はweb参照[12] | Bivetopsia Jousseaume, 1887 アカグチオリイレボラ ガラパゴス諸島[13] など。 |
Cancellaria 歯舌は左右の対が組み合わさる形態で、Nematoglossanと呼ばれる[14]。 図はハタエボラ。Cancellaria reticulata (Linnaeus, 1767) フロリダ, 中央アメリカ東岸 など。 | |
Euclia カブトコロモガイ Euclia cassidiformis (G. B. Sowerby I, 1832) カリフォルニア湾 など | |
Merica モモエボラ Merica sinensis (Reeve, 1856) 中国沿岸 など | |
Progabbia ノッポコロモガイ Cancellaria cooperi Gabb, 1865 アメリカ西岸、水深-0.6km など | |
Sydaphera コロモガイ Sydaphera spengleriana (Deshayes, 1830) 日本 など | |
Trigonostomatinae[注釈 2] | オリイレボラ類 |
Nipponaphera Habe, 1961 アサコロモガイ Nipponaphera habei Petit, 1971 房総半島以南から台湾の沖合 | |
Scalptia Jousseaume, 1887[15] オリイレボラ[16]などインド-西太平洋。 図はニヨリオリイレボラ[17] | |
Trigonostoma Blainville, 1825 インド-西太平洋。 ラセンオリイレボラ Trigonostoma scalare=Trigonostoma pellucida | |
Admetinae | エゾゴロモ類 |
Admete エゾゴロモ Admete viridula[18][注釈 3] (O. Fabricius, 1780) 鹿島灘以北、水深-1.5~0km。褐色の皮を被る。 図はAdmete viridula undata (MNHN-IM-2000-2159) カラ海 | |
Admetula 図はAdmetula affluens (MNHN-IM-2000-20500) ソロモン諸島、水深-0.6km | |
Brocchinia Jousseaume, 1887 図はBrocchinia canariensis (MNHN-IM-2000-23054), カナリア諸島 水深-0.6km | |
Mirandaphera Bouchet & Petit, 2002 図はMirandaphera cayrei (MNHN-IM-2000-2131) ニューカレドニア 水深-0.3km ソロモン諸島など西太平洋 | |
Sveltia Jousseaume, 1887 図はSveltia lyrata, イタリア半島 鮮新世 西アフリカ[19]など。化石が多い。 | |
Plesiotritoninae[注釈 4] | ニヨリセコバイ類 |
図はweb参照[17][20] | Plesiotriton vivus Habe & Okutani, 1981 ニヨリセコバイ。フィリピン ボホール |
図はweb参照[21][20] | Tritonoharapa leali Harasewych, Petit & Verhecken, 1992 バイアヒモカケシリキレボラ。ブラジル バイーア州[22] など。 縦長で約120゚ごとに縦張肋を残す。 |
図は文献参照[23] | Loxotaphrus=Fusimorio Loxotaphrus deshayesii[24] (Duval, 1841) |
形態
貝殻の形態は属によってさまざまであるが、おおむねやや縦長で、殻口が殻長の半分程度まで広く開いた種が多い。貝殻の表面はおおむね布目状で、種によって粗さや縦肋の強さが異なる。殻口はオリイレボラ類では逆三角形の種が多い。貝殻の軸唇には3本ほどの襞が巻かれる種が多い[26][27]。 胎貝や原殻は丸い[28]。本科の特徴として、蓋を持たない[29]。歯舌はブラシ状の中歯のみで側歯を持たず、吻で獲物の体液を吻から吸入していると考えられている。食道はとても長く、折りたたまれている。オスは頭の後ろ右側にペニスがあり、精管は基本的に閉じているが、溝状の種もある。メスは卵嚢腺の隣に蛋白腺をもつが、持たない種も観察されている[30] 。
生態
潮間帯から種によっては深海の泥砂底に棲む。長い吻を獲物に突き刺して体液を吸引すると考えられる[14]。卵胞は柄つきまたは柄の形の卵胞を産む[31][32]。
化石
カリフォルニア州の中新世の地層から多数のコロモガイ科 (Cancellariida) の化石が出ている[33]。日本では渥美半島の更新世の地層からコロモガイ類が見つかっている[34]。
脚注
注釈
出典
- ^ “Cancellariidae”. mindat.org. 2024年1月24日閲覧。
- ^ a b c “Cancellariidae”. WoRMS, Philippe Bouchet. 2024年1月24日閲覧。
- ^ a b c 貝類学 2010, p. 87.
- ^ a b Hayashi 2005.
- ^ Hasegawa 2009.
- ^ Bouchet et al. 2017.
- ^ Modica et al. 2011.
- ^ Modica 2011.
- ^ 奥谷 2004, p. 176-177.
- ^ アボット 1985, p. 234.
- ^ アボット 1985, p. 232.
- ^ “Cancellaria (Bivetopsia) chrysostoma haemastoma”. Conchology. 2024年1月25日閲覧。
- ^ アボット 1985, p. 231.
- ^ a b Petit & Harasewych 1986.
- ^ Modica 2015.
- ^ “オリイレボラ”. 愛知県 木村昭一. 2024年1月27日閲覧。
- ^ a b “ニヨリセコバイ”. 美貝. 2024年1月24日閲覧。
- ^ Hasegawa 2009, p. 319.
- ^ Verhecken 2007, p. 325.
- ^ a b Verhecken 2020, p. 79.
- ^ “Tritonoharpa antiquata”. Kwajalein Underwater. 2024年1月26日閲覧。
- ^ “バイアヒモカケシリキレボラ”. 美貝. 2024年1月24日閲覧。
- ^ Verhecken 2007, p. 320.
- ^ “Loxotaphrus deshayesii”. Conchology. 2024年1月24日閲覧。
- ^ Modica, Verhecken & Oliverio 2011, p. 120.
- ^ “Bivetiella cancellata”. Universidad de Granada. 2024年1月24日閲覧。
- ^ アボット 1985, p. 229-235.
- ^ Verhecken 2007, p. 300-301.
- ^ Simone 2011, p. 273,280,287,294,301.
- ^ Modica 2011, p. 119.
- ^ 伊藤 1994.
- ^ Verhecken 2007, p. 298.
- ^ Addicott 1970, p. 105-119, Pl.13-16.
- ^ 川瀬ら 2015, p. 93.
参考文献
外部リンク
- General Shell Portal
- Malacopics Photogallery
- Kwajalein Underwater
- 美貝データベース
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