しろうるり

しろうるりは、『徒然草』第60段に登場する言葉[1]

解説

しろうるりは「徒然草」第60段に登場する仁和寺真乗院の盛親僧都がある法師につけた渾名として登場する[2]。僧都自身、しろうるりについては、「さる物を我も知らず。若しあらましかば、この僧の顔に似てん」(そのような物を私も知らない。もしあるとすれば、この法師の顔に似ているだろう)とだけ言及している[2]。作品中には、この他にしろうるりについて触れられた箇所はなく、そのため詳細は知られておらず[3]、僧都の創作の可能性もある[4]。転じて作品中に登場した事物で詳しい言及を全くなされていないものを「しろうるり」と呼ぶことがある[5]

僧の顔が白瓜に似ており[6]言い損ねたのを知者・豪傑という彼の性格から言い直さなかったという解釈の他[7]伴信友白痴の事であろうとし[8]、諸説一定しない[9]。 他作品における用例からは、実態のないものの他に、のっぺりとした顔といった連想でも使用されていたとされる[5]。 「徒然草」が広く読まれるようになった江戸時代には、「しろうるり」へ好奇の目が向けられ、様々な解釈が施され、こうした解釈の延長線上に「白うるり」に具体的な姿を与え[7]天御中主神もしくは国常立神をもとに造型された[10]白うるりの魂と吉田兼好が語り合う謡曲〈白うるり〉が成立し[11]俳諧では元禄時代点者の批判書「白うるり」と[12]「黒うるり」が著された[13]

関連項目

脚注

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  1. ^ 林幸行 & 南条文雄 1904, pp. 595–596.
  2. ^ a b 徒然草第六十段 Archived 2008年2月18日, at the Wayback Machine.,2010-12-14閲覧。
  3. ^ 井上頼文 1920, p. 206.
  4. ^ 塚本哲三 1950, p. 156.
  5. ^ a b 佐伯友紀子 2008, pp. 46–47.
  6. ^ 平井頼吉 1895, p. 1581.
  7. ^ a b 伊海孝充 2011, p. 66.
  8. ^ 大和田建樹 1896, p. 1578.
  9. ^ 藤森花影 & 小関良次 1915, p. 101.
  10. ^ 伊海孝充 2011, p. 72.
  11. ^ 伊海孝充 2011, p. 67.
  12. ^ 潁原退蔵 1948, p. 93.
  13. ^ 潁原退蔵 1948, p. 94.
  14. ^ 伊藤龍平 2018, pp. 73–74.
  15. ^ 伊藤龍平 2018, p. 73.

外部リンク

ポータル 文学
  • 徒然草第六十段(原文および口語訳)
  • 徒然草第60段口語訳
ウィキソースにPage:Kokubun_taikan_09_part2.djvu/293の原文があります。
  • 平井頼吉『国文参考便覧 : 中学所用』雁金屋青山堂、1895年、81頁。doi:10.11501/868104。 NCID BA51901253。OCLC 673882335。国立国会図書館書誌ID:000000499355。https://dl.ndl.go.jp/pid/868104/1/432023年8月12日閲覧 
  • 大和田建樹『日本大辞典』博文館、1896年、1578頁。doi:10.11501/863448。 NCID BA90696540。OCLC 673805346。国立国会図書館書誌ID:000000495790。https://dl.ndl.go.jp/pid/863448/1/8632023年8月12日閲覧 
  • 林幸行、南条文雄『国語辞典』修学堂、1904年、595-596頁。doi:10.11501/862840。ISBN 9784283011977。 NCID BB21956005。OCLC 1006953774。国立国会図書館書誌ID:000000495298。https://dl.ndl.go.jp/pid/862840/1/3062023年8月12日閲覧 
  • 藤森花影、小関良次『徒然草詳解 補6版』玉英堂、1915年、101-102頁。doi:10.11501/954117。 NCID BA31601494。OCLC 673530276。国立国会図書館書誌ID:000000569776。https://dl.ndl.go.jp/pid/954117/1/762023年8月12日閲覧 
  • 井上頼文『井上徒然草講義 訂69版』尚栄堂、1920年、206頁。doi:10.11501/930890。 NCID BA51909663。OCLC 673099200。国立国会図書館書誌ID:000000549649。https://dl.ndl.go.jp/pid/930890/1/1302023年8月12日閲覧 
  • 潁原退蔵『俳諧史の研究 改訂版』星野書店、1948年、93頁。doi:10.11501/1345523。 NCID BN10049635。OCLC 673217111。国立国会図書館書誌ID:000001001978。https://dl.ndl.go.jp/pid/1345523/1/602023年8月12日閲覧 
  • 塚本哲三『通解徒然草 新訂』有朋堂、1950年、156-157頁。doi:10.11501/1105962。 NCID BN12979015。OCLC 39172547。国立国会図書館書誌ID:000000647334。https://dl.ndl.go.jp/pid/1105962/1/872023年8月12日閲覧 
  • 佐伯友紀子「「西鶴独吟百韻自註絵巻」における『徒然草』享受の再検討」『表現技術研究』第4号、広島大学表現技術プロジェクト研究センター、2008年、41-59頁、CRID 1390290699834312960、doi:10.15027/23146、NAID 120000876387、NCID AA12016400、OCLC 697821579、国立国会図書館書誌ID:000007552115、2023年8月12日閲覧 
  • 伊海孝充「謡曲〈白うるり〉の成立背景 : 『徒然草』の秘伝・中世神道説・謡文化が交叉するところ」『能楽研究』第36号、野上記念法政大学能楽研究所、2011年、65-86頁、CRID 1390290699803939200、doi:10.15002/00008464、hdl:10114/7672ISSN 03899616、NAID 120005199575、NCID AN00200313、OCLC 5185920319、国立国会図書館書誌ID:023916088、2023年8月12日閲覧 
  • 伊藤龍平『何かが後をついてくる : 妖怪と身体感覚』青弓社、2018年、73-74頁。ISBN 9784787220769。 NCID BB26689198。OCLC 1050204733。国立国会図書館書誌ID:029113305。https://books.google.co.jp/books?id=HvmbEAAAQBAJ&pg=PA73#v=onepage&q&f=false2023年8月12日閲覧